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日本のリニア技術、米で導入計画加速 ワシントン-NY 近く事業調査

【ワシントン=小雲規生】日本の超電導リニア技術で米首都ワシントンとニューヨークを結ぶ計画が動き始めている。昨年11月に一部路線での営業許可を得た地元民間企業「TNEM」などは近く事業調査に着手する見通し。日本側はJR東海が技術協力するほか、政府もトップセールスに乗り出して米国でのリニア計画の実現を目指している。鉄道インフラ輸出で中国などとの競合にさらされる日本は、米国での成果を他地域でのセールスにつなげたい考えだが、巨額の事業費の負担などについて難しい課題も残っている。

 TNEMは、再生可能エネルギーに長く関わってきた投資家のウェイン・ロジャース氏がトップを務める米企業で、JR東海の協力でリニア計画の実現を目指してきた。「北東回廊」と呼ばれるワシントン-ニューヨーク間(約330キロ)を1時間でつなぐ計画で、昨年11月にはワシントンとメリーランド州ボルティモア間(約60キロ)の廃止路線の営業権を取得することを州政府から承認された。

 TNEMは現在、具体的なルートの確定や環境への影響を見極めるための事業調査に向けた準備中。連邦政府から2800万ドル(約29億円)の補助金を得ることも決まっている。

 日本政府も計画を後押ししており、安倍晋三首相は2014年4月の東京での日米首脳会談でオバマ大統領に計画実現への協力を提案。ワシントンの日本大使館も米側に働きかけた結果、山梨リニア実験線に15年、フォックス運輸長官やホーガン・メリーランド州知事が試乗するなどしている。日本政府関係者は「日米協力の象徴となる“国策プロジェクト”だ」と意気込む。

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 日本の鉄道インフラの輸出をめぐっては昨年12月、テキサス州の高速鉄道計画でJR東海の新幹線技術が導入されることが決まった。しかしインドネシアでの高速鉄道計画では日本側の提案が中国側の提案に競り負けた。JR東日本が参画を狙うカリフォルニア州での計画でも日中などが激しい受注合戦を繰り広げている。

 それだけに、日本の技術の導入が前提で進む北東回廊のリニア計画は、日本にとって絶対に実現させたい案件だ。米国での実績は日本のリニア技術の「国際標準化」にもつながる。技術を無償提供するJR東海にも、今後の海外展開に弾みがつけば十分に利益を得られるという計算がある。

 ただしワシントン-ボルティモア間だけで100億ドル以上とも見積もられる事業費をめぐる課題も残る。日本側は国際協力銀行(JBIC)を通じた金融面での支援も検討しているが、具体的な金額や条件などは固まっていない。一方、米連邦政府は10年にメリーランド州が要請していた17億ドルの資金援助を「時期尚早」として却下した経緯もあり、時間のかかる問題といえそうだ。