日本を出国する旅行客全員から徴収する出国税は、日本人も対象で、受益と負担の在り方には疑問が残る。税収が特定の地方の観光振興に使われれば、その他の地域に住む日本人は納税の利益を得られないためだ。新たな税負担は誘客に逆効果との反発もあったが、9月からの数回の検討会で方針が決められそうだ。議論が精査されたとはいえず、訪日客拡大を急ぐ官邸の強い意向に押し切られた形だ。
新たな観光財源としての新税導入には、観光業界から「消費税増税も控え、さらなる負担は訪日観光に冷や水を浴びせかねない」と批判的な声が多かった。日本人が出国するたびに税金を払う見返りは明確に示されず「空港の利便性が上がる程度」(観光業界幹部)と受益の小ささを問題視する向きもある。
政府全体で既存の財源から観光施策のための財源を捻出できるとの考え方もあり、財務省内でも「税で解決するのは安直」との見方もあった。
だが、東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年の訪日客4000万人の目標必達に向け、官邸が強引に方針を定めた。与党の税制調査会などの検討プロセスを介さず、今後、詳細な制度設計が行われるようだ。
政府内では「1000円の負担増で急激に訪日客が減少することはない」(経済官庁幹部)との楽観論も広がる。ただ、「格安航空会社(LCC)の利用客や若者の旅行者にとっては1000円の値上げの影響は大きい」(旅行業界幹部)などと不安の声は尽きない。