中国で高級車が相次いで値下げされた。背景にあるのは自動車市場の低迷。昨年、28年ぶりにマイナス成長になった自動車販売台数は、今年なっても回復の兆しを見せていない。中国政府は販売台数の回復を目指して税制面からもテコ入れし支援している。
中国網によると、16日に値下げの口火を切ったのはドイツのベンツ。メルセデス・AMGの希望小売価格は最大6万4000元(約102万4000円)の引き下げ、メルセデス・マイバッハは最大6万元(約96万円)、メルセデス・ベンツは最大4万元(約64万円)、スマートは最大7000元(約11万2000円)の値下げとなる。
BMW(中国)と華晨宝馬(BMW)も続いた。両社は16日、即日から中国販売モデルの希望小売価格を引き下げると発表。BMWが中国で生産するBMW 3シリーズ、5シリーズ、X3とX5、7シリーズなどのほか、ミニブランドの傘下全モデルを含め値下げ幅は最大6万元という。
16日午後にはジャガーランドローバーが追随し公式サイトで、即日から中国で販売するジャガーとランドローバーの全シリーズの希望小売価格を引き下げると発表した。ジャガーの値下げ幅は最大4万2000元(約67万2000円)、ランドローバーは最大8万5000元(約136万円)。ランドローバー・レンジローバー輸入モデルは3万3000元(約52万8000円)、ジャガー・XFLは最大1万5000元(約24万円)の値下げとなる。ボルボやリンカーンも希望小売価格を引き下げた。
高級車値下げの理由について、中国網は「中国自動車市場が低迷し、販売が巨大な圧力に直面していることも関係している」と説明した。2018年に全体の販売台数が減少する一方で高級車は前年比9%増加したが、市場が低迷する中で、高級車ブランドの好成績は19年まで続かなかった。
19年1~2月の国内の狭義の乗用車販売台数は333万3000台で前年同期比9.8%減少、高級車メーカーの出荷台数は4%減少となった。2月の高級車メーカーの出荷台数は前年同期比2%減少し、小売台数は3%減少した。
高級車の値下げが可能になったもう一つの理由は、増値税の引き下げ。増値税は日本の消費税に相当する付加価値税で、物品の売買、加工、修理役務に課税される。中国税収の4割近くを占める。
3月5~15日に開催された第13回全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第2回会議の政府活動報告で、李克強首相は製造業などの税率を現行の16%から13%に、交通輸送業や建築業などの税率を10%から9%にそれぞれ引き下げる方針を明らかにした。中国が増値税を引き下げるのは、この1年で2回目。18年5月、製造業などの増値税を17%から16%に引き下げた際は、自動車企業の希望小売価格引き下げブームが起きた。