2020年10月以降、デジタル人民元は深セン、蘇州、北京、成都などの地域で一般向けに抽選によるプレゼントなどの試行テストが相次いで行われ、社会の注目を集めてきた。今年の全国両会(全国人民代表大会・中国人民政治協商会議)の会期中には、複数の全国人民代表大会(全人代)代表と中国人民政治協商会議全国委員会(全国政協)委員から、デジタル人民元の将来の発展に向けてさまざまな提案が行われた。北京青年報が伝えた。
提案1:デジタル通貨のウォレットは「ソフト」と「ハード」の両方が必要
全国政協委員を務める中国聯通集団(チャイナ・ユニコム)製品センターの張雲勇(ジャン・ユンヨン)社長は、「将来のデジタル通貨のウォレットには『ソフトタイプ』と『ハードタイプ』の2つがある。『ソフトタイプ』とは、携帯電話のアプリケーション形式のソフト型ウォレットを指し、『ハードタイプ』とは、携帯電話を使用せず、チップを使用した『ハードウォレット』を指す。スマホを使いこなせない高齢者でも『ハードウォレット』を使える。将来のデジタル通貨のウォレットは安全性とユニバーサルが大きな流れになり、デジタル経済の高齢化への対応やデジタルデバイド解消のために努力することになるだろう」との見方を示した。
全国政協委員を務める陝西省高級人民法院(高裁に相当)の鞏富文(ゴン・フーウェン)副院長はデジタル人民元に関する提案の中で、「高齢者層が抱える『デジタルデバイド』の問題を乗り越えることを重視すべきだ。デジタル人民元は技術、シーン、応用をめぐり積極的にイノベーションを展開し、試行テストの中でより多くの人々をカバーする必要があり、また高齢者など特殊な層のニーズを十分に考慮する必要がある」と述べた。
提案2:デジタル人民元の試行テスト・応用を推進
複数の全人代代表と全国政協委員が、デジタル人民元の試行テスト・応用をさらに推進し、テスト範囲を拡大する必要があると提案した。
鞏氏は、「広大な農村エリアでの試行テスト・応用を重視すべきだ。デジタル人民元の試行テストは『都市部を重視し農村部を軽視』してはならない」と提起した。
全人代代表を務める卓爾持ち株有限公司の閻志(イエン・ジー)会長は、「武漢をデジタル人民元試行テストの実施都市に加え、応用テストを早急にスタートするとともに、テストプロジェクトの技術開発などに武漢市が深く関わるよう支援し、フィンテックを積極的に運用して金融のデジタル化モデル転換を促進する」と提言した。
提案3:デジタル人民元を国境を越えた取引に利用
全国政協委員を務める東亜銀行の李民斌(リー・ミンビン)連席最高経営責任者(CEO)は、「デジタル人民元の試行テストを粤港澳大湾区(広州、仏山、肇慶、深セン、東莞、恵州、珠海、中山、江門の9市と香港、澳門<マカオ>両特別行政区によって構成される都市圏)の各都市で展開し、利用シーンを同区で金融商品を取引する『越境理財通』へと広げることを提言する。デジタル通貨の国境を越えた利用を実現することによって、同区の資金の流動を促進する」と述べた。
香港はまだ大陸部との間のデジタル人民元のマッチングメカニズムの構築をスタートしていない。李氏は、「関連の準備作業のペースが加速することを願う。香港が国際金融センターとして、デジタル人民元の発展で役割を発揮できれば、デジタル人民元の国際的競争力の向上につながるだろう」と述べた。
提案4:デジタル人民元のセキュリティーラインを守り抜く
鞏氏は、「デジタル人民元が電子決済に対して持つ重要な優位性は匿名でコントロールが可能だという点にある。すべての取り引き情報を握るのは中央銀行(中国人民銀行)だけだ。試行テストを行うと同時に、デジタル人民元の情報保護をめぐる立法作業を急ピッチで進め、関連の法律・法規を制定し、国民のプライバシー保護と国の安全との間でバランスの取れる点を見いだし、金融の消費者の合法的なプライバシー・権利が侵害されないよう確保することを提言する」と述べた。
また鞏氏は、「デジタル人民元は試行テストの中でセキュリティーの研究と投資を強化し、最も先進的な情報セキュリティー技術を総合的に運用し、リスクの分散、漏洩の想定、動的進行、攻撃と防御の相互促進といったポイントを踏まえてセキュリティーシステムの構築を進め、サイバー攻撃を効果的に防御し、セキュリティーの防衛ラインをしっかりと守り抜くことが必要だ」との見方を示した。